『ある少年の告白』 実話だからこそ、重くて悲しい

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 2016年、<同性愛を矯正するプログラム>という絶対にあってはいけないプログラムでの実体験を赤裸々に描き、アメリカ中に大きな衝撃を与えたガラルド・コンリーの原作を映画化した作品です。

 主人公は、優しい牧師の父親と母親の元に生まれ、何不自由なく楽しい大学生活を送っています。でもある日、自分が同性に惹かれることに気づき、両親にそのことをカミングアウトします。もしも自分の息子から、「僕はゲイだ」と告白されたらどうしますか? 彼の両親は、息子を抱きしめ「正直に話してくれてありがとう」という優しさを見せることは微塵もなく、同性愛を<治す>という恐るべき転向療法に参加させるという最悪な判断をしてしまうのです。もちろん読者の中に「ゲイは治せる」だなんて馬鹿な意見をお持ちの方はいないと思いますが、アメリカでは同性婚を認めてきた先進的な州がある一方、保守的な州では未だにゲイの存在すら認めない人たちがたくさんいます。主人公は、矯正プログラムという大義名分の元、恐ろしい目にあってしまう。でもそんな中で、本当の自分に気づいていく少年、そして息子への本当の想いに気づいていく両親の姿を描きます。

 この物語を一人でも多くの人に伝えようと、作品にはニコール・キッドマン、ラッセル・クロウという名優のほか、同性愛であることをカミングアウトしているグザヴィエ・ドラン、トロイ・シヴァンら豪華キャストが集結。中でも驚いたのは、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのベーシストであるフリーが妄信的な矯正コーチとしてびっくりするほどの熱演を見せていること! 音楽ファンは楽しみにしていてください。★★★★★(森田真帆)

監督:ジョエル・エドガートン

出演:ルーカス・ヘッジズ、ニコール・キッドマン、ラッセル・クロウ

4月19日(金)から全国公開

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