『殺人鬼を飼う女』 エロスも前面に出した多重人格ホラー

(C)2019「殺人鬼を飼う女」製作委員会

 『リング』でJホラー・ブームを牽引し、新作『貞子』も控える中田秀夫監督。昨年は『スマホを落としただけなのに』のヒットや人情喜劇『終わった人』など幅広い活躍ぶりだったが、そもそもは日活撮影所出身。大石圭の同名小説を原作に、エロスとホラーを前面に押し出した本作は、久々の本領発揮作と言っていい。

 主人公は、幼少期に受けた性的虐待の影響により4つの人格を持つ女性。ある日、マンションの隣人が憧れの小説家だと知って恋心を抱いたことをきっかけに、周囲で不審な死が相次ぐように…。多重人格を扱ったホラーは、最近でもシャマランの『スプリット』など使い古されてしまった感があるが、4つの人格を4人の女優(主人格には、ロマンポルノ・リブート・プロジェクトの中田監督作『ホワイトリリー』にも主演した飛鳥凛)が演じ、あたかも人格を擬人化したかのように、4人が同じ画面の中で話し合ったり、まぐわったりするのは、かなり新鮮。しかも、つい先日裁判でフィクションを地で行くような判決が出たばかりなので、むしろタイムリーな題材と言えるかも。

 ただし、無理やりR18+にするためか、ロマンポルノの現場で培った習性からか、SEXシーンが無駄に長いのが玉にキズ。中田監督なら、SEX=エロスではないことぐらい十分心得ているはずだから、そこには深い企みが隠されている気もするが。★★★★☆(外山真也)

監督:中田秀夫

原作:大石圭

出演:飛鳥凛、大島正華、松山愛里、中谷仁美、水橋研二

4月12日(金)から全国公開

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