正直言って、観るのがちょっと怖かった。若手の人気俳優が急に歌を歌い始めてライブをやって、たいして曲もよくないのに(失礼)キャーキャー言われて、なんだか目も当てられない状況になってしまっているのは若かりし頃何度も目にしてきたから。でも、その不安は1曲目から吹き飛んだ。すごいなあ、菅田将暉くん。まず、歌がうまい。音域も広く、ほどよく荒く、低音で声が野太くなる瞬間もいい。楽曲もいい。まっすぐに、力一杯歌うさまがとにかく素晴らしい。
2018年11月に恵比寿・LIQUIDROOMにて開催された一夜限りのプレミアムライブの全曲を収録した本作。オリジナルに加えカバー曲も豊富に織り交ぜた94分だ。もちろん、キャーキャーと女子たちの黄色い声は飛び交っているのだけれど、恋する女の子が好きな人を前にわけもわからずダサくなっちゃうあの感じをうまいこと巻き取って、彼は彼が今届けたいなにかを出し切っていたことが伝わってきた。そうか、人気ゆえのなりゆきじゃなくて、伝えたいことがあって音楽をしているから伝わるんだ。そんな当たり前がズバンと胸に飛び込んできて、ますます菅田将暉という人から目が離せなくなってしまった。
(エピックソニー・5000円+税)=玉木美企子