『ひなちゃんとふりかえる平成史』南ひろこ著 限りなく風刺に近いファンタジー

 いやー、ついに終焉を迎えますな平成時代。新しい元号もさることながら、より際立ってしまう、昭和生まれのババア感が気になって仕方がないアラフォー女ですこんにちは。平成を、極力引き留めたい気持ちでいっぱいですが、お別れの覚悟を込めて手に取ってみたのが本書だ。

 産経新聞で連載中の「ひなちゃんの日常」。本書は、その中から平成を象徴するテーマの漫画をピックアップし収録している。

携帯電話、少子高齢化、温暖化に東京スカイツリー、消費税にSNS、オリンピックに歩きスマホ……。この約30年を象徴するエピソードの数々に、あっという間だったように感じられる平成が、決して短くはなかったんだと知らされる。そして阪神淡路、東日本に熊本、そして大阪北部……。平成は震災と切っても切れない時代でもあった。そんな明るいだけではなかったこの30年を、ひなちゃんがまっすぐ朗らかに紹介している。

 生まれ育った家では産経新聞を取っていなかったので、たまにどこかでひなちゃんを見かけた時は、可愛すぎて若干(ほんとに若干ですよ)イラッとしていましたごめんなさい。だが読み進めていくうちに、ひなちゃんの視線を通して、平成という時代が激動でありながらも、温かい心を忘れていない月日であったように思えてくる。

「ゆうせんせきはおとしよりや、たっているのがつらいひとにすわってもらいましょう」と若者に熱く訴えるひなちゃん。真剣な眼差しの彼女は特等席(お父さんのおんぶ)から伝えている……。ホンワカかわいくて、まっすぐ。と思う一方で、そういえば平成の大ニュースオウム真理教が描かれていなかったのはなんでだろうってふと思った(ついでにミッチーサッチー騒動も)。あと原発問題も結構控えめ。そう思うと、本書は時事問題を扱った風刺に限りなく近い、ファンタジーのようにも見えてくるから不思議だ(それがいいか悪いかは置いといて)。

 歴史を語ること、人間の光と影を表現することの難しさ、清濁併せ呑むことの難しさについて考えながら本書を閉じた。

(産経新聞出版 1200円+税=アリー・マントワネット)

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