『希んちの暮らし』佐々木希著 単なるできた嫁

 ご結婚おめでとうございます!(遅)

 すんごいメディアに出ているわりにあんまり人となりが伝わってこない、ミステリアス美女こと佐々木希。デビュー当初はちょっとしたギャルだったこと、最近では料理上手なこと、演技はちょっと苦手かな?(でも超かわいいから問題なし)ってことくらいしか存じ上げないのですが、この度そんな佐々木希による書籍『希んちの暮らし』が発売されました。

 本書は料理を軸に、その名の通り佐々木希の暮らしを紹介しているライフスタイルブック。掲載されているのは、母から教わった故郷秋田の郷土料理をはじめとする「うちの定番メニュー」に、冷蔵庫の中身紹介、愛用の調理道具や器、調味料、そして料理のプロに学ぶ出汁の取り方、酒の肴、作りおき惣菜、お弁当レシピなどなどなど……。

 いやはや、見事に隙がない。美貌、郷土愛、料理上手。つまんねー。しかも真面目でいい子そうで、ずるい!つまらん!嫉妬の対象!

 どうせ猫被ってんじゃないの?って穿った目線で読み進めていましたが、読めば読むほど伝わってくるのが佐々木の本気。食生活アドバイザーの資格を取ったり、プロの料理人との対談なんて「この間、教えていただいたドライトマトの和え物を作ったらすごく好評でした」から始まり、ねぎを炒める際の手順の説明では「油を入れる順番でこんなにも仕上がりが変わるんですね」、袋に調味料と鶏肉を入れて鍋で茹でる、ゆで鶏については「放置している間に他の料理もできるのが嬉しいです」、挙げ句お弁当についてなんて、普段使っている曲げわっぱを指して「伝統工芸ならではの美しい佇まいでより美味しく食べられるのですが、曲線の詰め方が難しく……」。なんも言えねぇ。ぐうの音もでねぇ。

 なんだ、これは、完敗を認めざるを得ないじゃないか。えーとね、本書は、単なる最高にできた嫁の、地に足ついた料理本でした。

(講談社 1200円+税=アリー・マントワネット)

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