『ウトヤ島、7月22日』 ワンカットだからこそ伝わる恐怖と緊迫感

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 2011年7月22日に、ノルウェーで恐ろしい連続テロが起きたことを覚えていますか? 最初に首都オスロの政府庁舎前で爆発事件が起き、その後、高校生ら若者たちがキャンプを楽しんでいた小さなウトヤ島で、犯人の男が無差別テロを起こしました。

 実は、この事件はNetflixでも映画化されているので、全体の状況に興味を持ったら先にNetflixを観ると、より分かりやすいと思います。というのも、本作は事件を再現した72分間をワンカットで捉えているから。あの日、子供たちが安全だと思っていたウトヤ島でどんなに恐ろしいことが起きていたのか。ワンカットだからこそ、私たち観客は一瞬にして、恐怖のどん底に落とされた若者たちの地獄絵図の中に入り込んでしまいます。

 突然の銃乱射などで命を落とした人は、全部で77人。当日の朝に起きた爆発事件の影響、そして犯人が警察官になりすましたことで現場はパニックになり、警察の到着も遅れたせいで銃撃は1時間以上続いたのです。さっきまで話していた友人が、パンっという乾いた銃弾の音で倒れていく。あまりにも簡単に命が奪われたことが、とても衝撃的です。そして何より、ここまで残酷なことがたった一人の男によってできてしまう「銃」の恐ろしさを痛感する作品となっています。★★★★☆(森田真帆)

監督:エリック・ポッペ

出演:アンドレア・ベルンツェン、ブレーデ・フリスタット

3月8日(金)から全国順次公開

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