『洗骨』 亡き人の骨を洗う不思議な風習が伝える、命の尊さ

(C)「洗骨」製作委員会

 タイトルにある「洗骨」という風習のことを知っている方はどのくらいいるでしょうか? 私もこの映画を観るまで知らなかったのですが、「洗骨」というのは亡くなった方を風葬して、数年経った後にミイラ化した遺体をもう一度取り出し、家族が骨を一本一本洗っていくという沖縄の離島で受け継がれている独特な風習です。

 舞台は美しい粟国島。最愛の妻を亡くし、彼女のことを忘れられず、酒に溺れる父の元に帰省する息子と娘。母の洗骨の儀式を前に、久しぶりに顔を合わせた家族が今一度繋がっていく様子を描きます。

 監督・脚本は、お笑いコンビのガレッジセール、ゴリこと照屋年之。お笑い芸人出身の監督には、北野武を筆頭に松本人志や品川ヒロシ、板尾創路などたくさんの才能がいます。実は、照屋監督もとても才能があり、人間の心の機微をとても優しく、温かく紡ぐことができる方です。この映画もまた、美しい海と空に囲まれた沖縄の島を舞台に、酒に溺れてしまう父親、そして久しぶりに帰ってきたと思ったら妊婦になっている妹、生真面目な兄、島の親戚たちとの人間ドラマを、切なさと思わず笑ってしまう面白さの絶妙なバランスで描きます。亡くなった人への美しい弔いの形は、家族の大切さ、そして命の尊さを改めて私たちに教えてくれる。芸人監督と侮るなかれ、本当に素敵な作品に仕上がっています。★★★★★(森田真帆)

監督・脚本:照屋年之

出演:奥田瑛二、筒井道隆、水崎綾女

2月9日(土)から全国公開

© 一般社団法人共同通信社