『検察側の罪人』 一級の社会派サスペンス。二宮と共演者の演技合戦が見どころ

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 ベストセラー『犯人に告ぐ』で知られる雫井脩介の同名小説を、木村拓哉×二宮和也の初共演で映画化した原田眞人監督の新作だ。老夫婦が刺殺された事件の容疑者として浮上したのは、時効を迎えた23年前の女子高校生殺人事件で重要参考人だった男。東京地検刑事部のエリート検事・最上は、その男に照準を定めて執拗に追い詰めていくが、それにはある理由=私憤が…。

 司法制度が抱える問題に鋭く切り込みながら、“正義とは何か”を問う社会派サスペンスで、構造として面白いのは、殺人事件を捜査する“刑事もの”であるにもかかわらず、同じく木村主演の『HERO』のように主人公=検事の目線に立って事件の謎に迫ってはいかないこと。いわゆる“ミステリーもの”ではないのだ。

 そこでポイントとなるのが、最上に心酔する新米検事・沖野を演じる二宮の類いまれな演技力。×木村、×松重豊、×吉高由里子(『GANTZ』のカップル!)、そして×カギを握る容疑者役の酒向芳…。これら共演者たちとの見応えのある演技合戦こそが、本作の最大の見どころといえる。しかも、原田監督らしい、早口のセリフ回しとテンポの速い編集が、そこから情緒的なベタつきを削ぎ落し、この映画にハードボイルドな大人の空気をまとわせている。全てにおいて一級品、骨太の“対決映画”だ。★★★★★(外山真也)

監督・脚本:原田眞人

出演:木村拓哉、二宮和也、吉高由里子、平岳大、大倉孝二、八嶋智人、松重豊、山☆(崎の大が立の下の横棒なし)努

8月24日(金)から全国公開

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