『東京ノワール』 荒削りだけど、希望を感じる面白さ

(C)2018「東京ノワール」フィルムパートナーズ

 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018で上映された、ヤマシタマサ監督の作品。ヤクザから足を洗う決意をした男の一日を描いています。ヤクザ、警察、ヤクザを親に持つ子どもたちの関係が、バラバラに描かれる時系列の中でだんだんと埋まっていく。

 メジャーな作品ではなく、どちらかというと自主映画の本作には、もちろん荒削りなところもたくさんあります。でも、映画『探偵はBARにいる』シリーズの撮影監督を務めた田中一成だけあり、昔の東映作品のような粗っぽい映像はハードボイルドでかっこいいし、何よりも主演の井上幸太郎がとってもいい。彼は舞台の俳優さんですが、仁義や極道への思いを大事にしながらも、現実の生活にはすっかり疲れてしまった都会のヤクザを非常にナチュラルに演じていて、なんだかすごくリアルでした。時系列が入り組んだドラマってなかなか難しいのだけれど、最後の最後で予想を思いっきり裏切られたりして、「やられた!」感もたっぷり。全部わかっていた気になってた自分が悔しい! 最近は、『カメラを止めるな!』がものすごい話題を呼んでいて、自主映画に足を運ぶ方も多くて嬉しい限りですが、機会があったら、こんな風に、絶滅寸前のヤクザ映画に挑んだ作品も観てみてもらいたいなって思いました。★★★☆☆(森田真帆)

監督:ヤマシタマサ

出演:井上幸太郎

8月4日(土)から全国順次公開

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