『Aさんの恋路。』やまもとりえ著 整形だってことにしたい

 美人はくそつまんねえという限りなく真実に近い持論を、心の拠り所にしてきました。ちょっといい感じだった男子を、明るく元気な小顔の肉食女子にかっさらわれた時も、あいつ言動だせえからなって散々心で貶したものです。何があったか知らんけど、職場での雑談で「みなさーん、不倫はダ・メ・で・す・よ☆」とか突如言うのやば。「ほんと胃が合うんですよね~」って表現ださ。毎日散々結婚結婚言ってるくせに、友達の結婚式に出た翌日「結婚したくなりました…」とかしみじみ口調で言うのださ。先輩イジリやば。失言ださ。

 ……みたいな感じで美人のことダサー、つまらなーと心のなかでdisりまくって幾星霜なわけですが、本書の、作者の、やまもとりえ、の顔。めっっっっちゃ美人。なんだそれ。美人が面白いとか、やってらんねえな!

 本書は、そんな作者の顔面偏差値とは程遠いほどのこじらせ感満載のおひとりさマンガだ。前作は30代独身、恋人なし。孤高のOL・Aさんを軸に描かれた『Aさんの場合。』、その第二弾となるのがこの『Aさんの恋路。』だ。これまで一人で十分と言っていたAさんの、恋の予感の物語である。

「私には何があるんだろう」「男の人は若い子が好きだからねぇ」「Aさんに近づいてくる男がいたら、マルチかなんかだと思うんで気を付けてください」「自虐って楽よね」「Aさんって、どうして独身なんですか?」「なんで離婚するのに結婚するのか分からんよね」「事故にあうかもしれないのに、なんで免許とったんですか?」「生きるのに上手も下手もあるんですかね」「なんだか今日はいい日だったな」「いつでも帰ってきていいからね」……。

 後悔に苛まれても、願っていた未来じゃなくても、誰かにつけられた傷に怒っていたのに、自分もまた誰かに同じ傷をつけようとしてしまっていても、明日は来る。それだけで十分であり、それだけが希望だと、そんなことを思いながら本を閉じた。

 くっそー、やまもとりえ。美人のくせに、美人な上に人間の滑稽さや残酷さ、優しさに怖さまで可愛く描けるなんて、ずるいじゃないか。しかも年下の夫と二児に猫までいる暮らし送ってるらしいし、なんだそれ。いやもー整形確定だな(ただいま不適切な発言がありました)。そうこれは、嫉妬以外のなにものでもないってことくらい、重々承知しておりますよっと。

(祥伝社 1200円+税)=アリー・マントワネット

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