『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』 闇がほとんどない中での恐怖を描く、掟破りのホラー映画

(C)2018 Winchester Film Holdings Pty Ltd, Eclipse Pictures, Inc., Screen Australia and Screen Queensland Pty Ltd. All Rights Reserved.

 “ウィンチェスター・ミステリー・ハウス”として知られる実在の屋敷を舞台にしたホラー映画だ。ライフル銃で莫大な財産を築いたウィンチェスター家の未亡人サラが、ウィンチェスター銃で命を落とした亡霊たちを恐れ、彼らを閉じ込めるために毎日24時間絶え間なく増改築を続けたことで、屋敷は最大で7階建て500もの部屋を持つまでに膨れ上がったという。本作はその実話の映画化で、精神不安を理由にサラから経営権を剥奪しようとウィンチェスター社が屋敷に送り込んだ精神科医の視点で描かれる“お化け屋敷”映画だ。

 お化け屋敷ものは、ホラーの中でも最も映画的なサブジャンルと言えるだろう。幽霊は、目に見えるものと見えないものの境界を象徴する存在であるがゆえ、映画の本質に触れる題材であり、しかも扉や窓、階段、鏡、そして光と影といった映画的なアイテムにあふれているから。さらに今回は“銃”という最強の映画の友まで加勢してくれているのだから、映画としては見応え十分!

 ただし、そのことと怖いかどうかは別の問題。この設定には、大きな落とし穴が潜んでいた。それは、昼夜を問わず大勢の大工たちが屋敷の至る所で働いているということ。実は、幽霊が本領を発揮できる場所(人気のない闇)がほとんどない状況下で、その恐怖を描くというタブーに果敢に挑んだ、掟破りのホラー映画なのである。斬新。★★★★☆(外山真也)

監督:マイケル&ピーター・スピエリッグ

出演:ヘレン・ミレン、ジェイソン・クラーク

6月29日(金)から全国公開

© 一般社団法人共同通信社