『少女邂逅』 疾走感と青春の甘酸っぱさに胸を締め付けられる!

(C)2017『少女邂逅』フィルムパートナーズ

 学生映画『さよならスピカ』『美味しく、腐る。』などで注目の24歳の新鋭・枝優花が、14歳の頃の実体験を投影させて描くみずみずしい青春映画だ。イジメが原因で声が出なくなってしまった主人公のミユリが、山で拾って一時心のよりどころだった蚕(「ツムギ」と名付ける)の化身のような転校生の少女・紬(つむぎ)と心を通わせていくが…。

 女の子ならではの多感で繊細な感性をすくい取っている点が最大の見どころだが、決して感覚だけの映画ではない。それを映像作品として具現化する術を、この若い女性監督は知っているように思える。しかも、本能的に分かっているのではなく、古典から学んだと思しき懐かしさが感じられるのだ。

 青みがかった画面を多用しながら、例えば自転車の二人乗りや風に揺れる白いカーテン、図書館、理科の実験室といった、いかにも青春っぽいイメージやアイテムを積み重ねていく手法がまさにそう。とりわけ、二人が校舎の階段を駆け降りて自転車に乗って走るところから雨の電話ボックスまでの一連のシーンは見事の一言で、疾走感と青春の甘酸っぱさがない交ぜになって見る者の胸を締め付ける!

 紬が実在するのか曖昧なままの幻想性=寓意性も効いていて、山戸結希のような圧倒される才能ではないものの、その確かな世界観の構築力が今後を期待させる。★★★★☆(外山真也)

監督・脚本:枝優花

出演:保紫萌香、モトーラ世理奈

6月30日(土)から全国順次公開

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