『焼肉ドラゴン』 女優たちが見せる、それぞれの新境地

(C)2018「焼肉ドラゴン」製作委員会

 この映画は、ビートたけしが主演して話題を呼んだ『血と骨』などの脚本家、鄭義信が初めて映画のメガホンを握った作品。1970年代、関西の小さな焼肉屋さんの「焼肉ドラゴン」を舞台に、第二次世界大戦に従軍して腕を負傷した父親と、再婚相手の母親、そして三姉妹と弟が、貧しくもたくましく生きる日々を描いています。

 『血と骨』もそうですが、在日コリアンにスポットを当てた映画は、どこか日本人とは違うから、という線引きをして観てしまうかもしれません。差別される辛さなんて私たちにはなかなか分からないし、共感するのは難しいかもしれない。でもこの映画に出てくるお父さんもお母さんも、共通するのは自分たちの子供たちを愛情たっぷりに育てていること。逆境の中で、家族が肩を寄せ合って、そして時には仲間たちと素直に助け合って、喧嘩したり、小さなことで大笑いしたり、泣いたりしながら生きていくことって、韓国人、日本人ということは全然関係なく、「ああ、家族っていいな」と、深いところで共鳴できました。

 三姉妹は、しっかり者だけど静かな長女を真木よう子、情熱的で喧嘩っ早い次女を井上真央、甘えん坊で奔放な三女を桜庭ななみが演じていますが、どの役柄もこれまで彼女たちが演じてきたのとはちょっと違うキャラクターばかり。演技派の彼女たちが新たに開いた新境地の扉。そしてそのお芝居でキラキラと輝く彼女たちの成長を楽しみにしてもらいたいです。★★★★★(森田真帆)

監督:鄭義信

出演:真木よう子、井上真央、大泉洋、桜庭ななみ

6月22日(金)から全国公開

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