『レディ・バード』 思春期の揺れ動く心を繊細かつリアルに活写

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 グレタ・ガーウィグは、『フランシス・ハ』で注目され、ミア・ハンセン=ラヴの『EDEN/エデン』やマイク・ミルズの『20センチュリー・ウーマン』など気鋭の監督の作品で存在感を見せる話題の女優だ。ウェス・アンダーソンのストップモーション・アニメ『犬ヶ島』(公開中)でも声を担っている。脚本や監督業にも意欲的なことは知っていたが、初の単独監督作で、いきなりアカデミー賞の監督賞と脚本賞にノミネートされるとは!

 自伝的な要素のある作品で、2002年のカリフォルニア州サクラメントを舞台に、田舎を抜け出してニューヨークへの大学進学を夢見る17歳“レディ・バード”の、高校生活最後の年を描いている。演じるのは、若手屈指の演技派シアーシャ・ローナン。本作は、ゴールデングローブ賞で作品賞と主演女優賞に輝いており、まさに才媛2人の相乗効果が生んだ佳作といえる。

 つまり、思春期の女の子の揺れ動く心情を繊細かつリアルに活写した映画。主人公の等身大の魅力、真っすぐなまなざしが最大の見どころなのだが、だからといって、デビュー作ならではの若い感性で突っ走った作品ではない。むしろ逆で、青春映画のみずみずしい世界観が計算によって構築された老獪な作品。脚本と演出と演技が完全に同じ方向を向いていなければ、こんな世界観は作れないだろう。★★★★☆(外山真也)

監督・脚本:グレタ・ガーウィグ

出演:シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ

6月1日(金)から全国公開

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