『最初で最後のキス』 三角関係を描く正統派の青春映画、ただし男1人はゲイ…

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 トリュフォーの『突然炎のごとく』、ゴダールの『はなればなれに』…青春映画といえば女1人男2人の三角関係、というイメージを定着させたのは、フランスのヌーベルバーグだろう。その影響下で映画を撮り始めたイタリアのベルトルッチにも『ドリーマーズ』があり、本作はその流れをくむイタリアの青春映画。男の1人がゲイという設定が現代的だ。

 里親夫婦に引き取られイタリア北部の小さな町に越してきた孤児のロレンツォが、学校で浮いた存在の男女(アントニオ、ブルー)と意気投合して友情を育むが、やがて歯車が狂い始め…。『あしたのパスタはアルデンテ』『はじまりは5つ星ホテルから』などの脚本で知られるコトロネーオ監督が、2008年にアメリカで起きた事件から着想を得て書いた小説を自ら映画化している。

 三角形というのは、カメラの三脚のようにバランスが良く、本来は安定を生むものだが、それが男女の話になると、たちまち不安定の代名詞となる。3人が幸せそうに見えれば見えるほど、見る側は不安に駆られるし、往々にして死の影が付きまとう。青春は永遠には続かないから(だから美しい)。その意味で本作も、青春の終焉を死というメタファーによって鮮烈に画面に刻みつける正統派の青春映画に属するだろう。青春につきものの“妄想”の映像化も、ミュージカル仕立てがキャラクターを引き立てていて効果的だ。★★★★☆(外山真也)

監督・原作・脚本:イヴァン・コトロネーオ

出演:リマウ・グリッロ・リッツベルガー、ヴァレンティーナ・ロマーニ、レオナルド・パッザッリ

6月2日(土)から全国順次公開

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