『ファントム・スレッド』 何もかもがとんでもない、最高に上質な<男と女>の物語

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 1950年代のロンドンを舞台に、オートクチュールの有名な仕立て屋であるレイノルズ・ウッドコックと、そのミューズの特別な関係性をポール・トーマス・アンダーソン監督が、ダニエル・デイ=ルイス主演で描いた作品です。ウッドコックは、ものすごく完璧主義で神経質な男。そんな彼が出会ったのは、田舎町でウェイトレスをして働く素朴でおとなしい女性アルマ。ロマンチックに惹かれ合う二人ですが、ミューズとして彼女が彼の家に住み始めたことで、彼の完璧な静寂の日常は少しずつ乱れていきます。

 美しい音楽と映像とダニエルの完璧な演技に酔いしれながらも、描かれている愛はなんとも言えず、男も女もお互いとんでもなく極端で不気味。なのになぜか共感もしちゃう不思議。追いかけられていた恋が、いつの間にか立場が逆転しちゃっててめっちゃ夢中になってるってこと、男と女の関係にはありませんか? ぶっちゃけそんな男と女の笑いのエッセンスも、スパイスとして加わっているんです。描きようによっちゃ完全にバカップルな二人の関係を最高に上質に描いて、サスペンスフルに、ホラーに、ロマンチックに仕上げているから、アンダーソン監督はすごすぎますね。

 女って、恋愛でとんでもなくおっかない人間になることがあるけど、ウッドコックに見せるアルマの表情を見ていると、嫉妬や恨みがこもると言われる女性の般若面を思い出してしまいました。地震、雷、火事、親父より、女ほど怖いものはありません! ★★★★★(森田真帆)

監督:ポール・トーマス・アンダーソン

出演:ダニエル・デイ=ルイス

5月26日(土)から全国公開

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