『人は他人 異なる思考を楽しむ工夫』さわぐちけいすけ著 次の一手に超期待

 大学生のとき、メディア論だか雑誌編集だかの先生が言ってた。「何を言うかはさして重要ではない。誰が言うか、どう言うかが重要だ」と。

15年くらい経った今でも思い出すということは相当にインパクトが大きかったわけなんだけど、SNSの台頭でその説は崩れつつあるのかもしれない。だって本書の著者・さわぐちけいすけ氏って、何者?

 Twitterで共感を集め、初の書籍「妻は他人 だから夫婦は面白い」が話題となったさわぐち氏。フォロワー数は15万人突破となった彼の新刊のテーマは人間関係。嫉妬に劣等感、焦燥感の原因を探り、解決のヒントを提案している。

 「人に優しくするには想像力が要り、想像するためには情報が要る」、「学べば学ぶほど、不安は増えます。自信を持って不安でいてください」、「やる気が出るのはやり始めてから」「忘れる事を忘れないで」……。

 さわぐち氏の思考は理路整然としていて、それでいて他者への思いやりを常に持っている。自分にも相手にも期待することなく、それぞれが気持ちよく自分でいるための発想の転換が紹介されている。

 何者なんださわぐち氏! プロフィールには絵や漫画を描く人と書かれているけど、全くもってしっくり来ないぞさわぐち氏。漫画より大切にしているものがありそう、というか、漫画より得意なものがあって、その紹介をするための媒体が漫画、って感じ。カウンセラー?コーチ? なんか、そんな感じ。人間関係のことはこんなにも整然と処理できるのに、自身の方向性についてはまだまだ道の途中なのね。

……って思ったらまだ弱冠29歳!わっかー。そら方向性なんてこれからで十分だわ。これから先の、次の一手が楽しみな人って、なかなかいませんよ。

(KADOKAWA 1000円+税)=アリー・マントワネット

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