『Saya Little Player』神田沙也加著 地雷てんこもり

『アナと雪の女王』でその座を不動のものにした神田沙也加。もう彼女を「二世タレント」「親の七光り」と揶揄する者はいないだろう。本書は昨年結婚した(おめでとう!!)彼女のこれまでと今、そしてこれからを描いたエッセーだ。

 優等生で繊細。本書を読んで抱いた神田の印象はそんな感じ。甘い世界観と裏腹に、当然ながら幼少時代は苦労が多かったようで、お世辞にも明るいとは言えないエピソードの数々。そして、どうしたって気になるのは母親という存在。頻出するのではない。むしろ避けてるのかなってくらい出てこないのだ。そう感じるのは、時々虫食い算のような文章があるからだろうか。

 多忙な両親の代わりに、親戚が親代わり、きょうだい代わりになってくれていたという幼少時代。「色々なところへ連れて行ってくれたり、楽しい思い出をいっぱい作ってくれて。」と、親戚から愛情をたくさん受けて育ったことがうかがえる。

 その後に続く文章はこうだ。「私もみんなが大好きだったから、旅行に行ってもホームシックがひどくって、泣いて帰りたくなっちゃうような子でした(笑)。」

……

 ん?旅行に連れて行ってくれたのは、「色々なところへ連れて行ってくれた」親戚じゃないの?と読み進めていた目が止まり、しばらくして気づく。ああ、両親のことか……。

 こんなふうに引っかかる点がいくつかあるのは、本当はお母さんに言いたいことが、わかってほしいことがいっぱいあるからなんだろうな。いまだに。

 そんな不器用の極み、子供の頃から大事に育てた地雷てんこもりの神田だが(※イメージです)、この度村田充というパートナーと出会い、幸せに暮らしてるという。よかったね!!本書では、二人の出会いから今日までのこと、そして夫から見た神田沙也加も語られている。

 素敵だなあって思ったのは、夫が妻に、敬意を払っていること。それって大事ですよね。妻から夫への尊敬の念は……すみません確認します!

 そんなこんなで幸せそうなお二人、最後に心温まるエピソードをみなさんにおすそわけしてお別れしましょう。プロポーズの言葉は『アナ雪』にちなんでハンス王子がアナに贈ったプロポーズを模したんだとか。

……ってそれ最終的に騙されるやつじゃん!!!その言葉を受けて一抹の不安を感じなかったのかアナ!じゃなかった沙也加!え、感じなかった?そっかー、じゃあ、末長くお幸せにー。

(マガジンハウス 1500円+税)=アリー・マントワネット

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