『くらべる世界』おかべたかし文、山出高士写真 所変われば品変わる

 表紙の写真、なんだか分かりますか? フランスのじゃんけんだそうです。手をすぼめた右下の手は「井戸」を表し、グー(石)とチョキ(はさみ)は井戸に沈められるので勝つけれど、パー(木の葉)は井戸をふさがれるので負ける。

 というように、本書はカレンダーやあやとり、ネクタイなど33の項目について、異なる2カ国でどう違うのかを見開きカラー写真と解説で紹介する。実にシンプルな企画だが、写真で示されると思わずうなってしまう。

 ずっと当たり前と思っていたものが、そうではないと知ったときの軽い衝撃。日本の雪だるまは雪玉を2段に重ねるが、米国は3段。中国も2段だが、胴体部分はだいたい円すい形をしているという。韓国のショートケーキにはプチトマトが乗っているし、会話の時のあいづちや玄関の表札、うがいは日本特有の慣習。ベトナムの干支にはウサギの代わりにネコがいて、モンゴルではトラの代わりにヒョウがいる。

 「異文化理解に役立つ」というと堅苦しいが、自分たちとは異なる文化や考え方の存在を知ることは、多様性を認めるという意味では平和への第一歩だろう。

 いや単純に、違いの由来や意味を想像するだけで楽しい。フランスのじゃんけんは「木の葉」と「井戸」の勝率がほかよりも高くなるが、それでうまくいくのか。そもそもなんで井戸なんだ? インドネシアでは親指(ゾウ)、人差し指(人)、小指(アリ)を出し、アリはゾウに勝つ。なぜ? 想像力が問われる。

(東京書籍 1300円+税)=片岡義博

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