テレビの画面にふいに現れる、猫目の彼女のことがずっと気になっていた。
山本彩。NMB48の「絶対的エース」でありながら、アイドル、というイメージからちょっとズレていて、無駄には笑わない、その感じがいい。ソロでも活動をスタートさせていると知り、早速本作を手にとってみた。
2017年に行われたライブツアーのなかから、11月19日のNHKホール公演の模様を収録した本作。うまい。歌も、ギターも。とにかくそれが第一印象だ。
ロックなサウンドに、素直な感情のひだを綴った歌詞。なんと、楽曲の多くが彼女の作詞・作曲だとか! まったくもって、その才能と探究心に驚かされるばかりだ。3階席まで満員御礼のNHKホール。それでもペンライトで埋め尽くされるアイドルコンサート的光景はほとんどなく、ライブハウスさながらの熱気に満ちていた。
MCの際の、観客との掛け合いも堂にいったもの。「営業をやっておけば大体の仕事はできる」とか言われるのと同じで、アイドルをやっておけば芸能の筋肉がつくのだろうか? いや、どれもこれも、彼女の努力と、これまでこなしてきた場数のたまものなのだろう。
かつてのアイドルのような、キャラクターを背負ったり、虚像を演じるような切なさが、彼女の姿からはにじみでていない。それがまた、観るものをすがすがしい気持ちにさせるのではないだろうか。自分の魅力や役割を理解し、受け止めてそこからさらに羽ばたこうとする。そんな難波娘のたくましさを目の当たりにした気がした。
(laugh out loud records・4800円+税)=玉木美企子