『今夜、ロマンス劇場で』 究極の映画愛を描くロマンチック・コメディー

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 『テルマエ・ロマエ』を大ヒットさせた仕掛け人が、綾瀬はるか×坂口健太郎の共演で究極の映画愛を描くロマンチック・コメディー。監督も『テルマエ』と同じ武内英樹だが、今回は原作のないオリジナル作品だ。映画会社で助監督として働く青年の目の前に、彼が恋焦がれる古いモノクロ映画のお姫様が現れ…。

 映画の登場人物がスクリーンの中から出てくるというのは、ウディ・アレンの『カイロの紫のバラ』とその元ネタ『キートンの探偵学入門』からの借用だが、それ以外にも名作映画のパロディーやオマージュが満載。武内監督はフジテレビのディレクターで、いわゆるシネフィルではないけれど、例えば雨が突然激しく降ったかと思えば、いきなりやんで虹が出る…といった映画の中ではよくあること=映画らしさを熟知しているよう。とりわけ、モノクロとカラーの対比、散らばるドロップ飴や赤色の活用など色彩設計は巧みだし、CGでお姫様がスクリーンから出てくるカットを見せないセンスも素晴らしい。もっと映画界で評価されていい才能だろう。

 それにしても、お姫様を映画そのもののメタファーだと解釈すると、映画だけに人生を捧げた現実を生きられない男の話ということになる。少子化問題や若者の保守化、日常の重要性といった世の中の流れに逆行するかのようなメッセージに共感を覚えつつも、映画の未来に悲観的になる。★★★★☆(外山真也)

監督:武内英樹

脚本:宇山佳佑

出演:綾瀬はるか、坂口健太郎

2月10日(土)から全国公開

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