『淡麗女子(R)のススメ』芳中千裕著 日本語ムズカシネ

 突然ですが問題です。「淡麗」とは、どんな意味でしょうか。

「たん‐れい【淡麗】日本酒の口当たりが、さっぱりとしていて癖がないこと。糖度と酸味の低いものにいう。「淡麗辛口」→濃醇 (のうじゅん)  出典:デジタル大辞泉(小学館)」

 ……だそうです。続きまして第二問。では「淡麗女子」ってなんぞや。クセのない女性のこと?さっぱりしている辛口女子?正解はこちら。

「淡麗女子とは、

 一 美しく決断して行動している

 一 しなやかに自立している

 一 目に見えない価値を広げている

女性のことを指すそうですよ。

 本書は、他人の評価や常識に左右されず、地に足をつけながら、仕事もプライベートも輝く女性になるための指南書。「女性らしさ」よりも「自分らしさ」を大切にする生き方の実現を目指している。

「自己犠牲は美しくない」「完璧よりも完了すること」「成功の鍵は波に乗る勇気」「セルフイメージは低い方がうまくいく」……。しなやかに生き抜くための著者のポリシーは、どれもこれもが真理を突いていて、思い当たる節だらけ。なのだけど、ひとつだけどうしても気になることが。

「淡麗女子」って何?

 先述の通り淡麗という言葉が世に存在し、そちらの意味が辞書にも載っているのならば、「淡麗女子」という言葉に新しい意味を込めようとするのも無理があると思うのだ。実際、本書でも「淡麗女子」を定義する言葉が山のように出てくる。

「美しく、しなやかに、潔く、生きる」とか「仕事もプライベートも輝く女性」とか。

「仕事は生きがい。人生のテーマに沿った生き方をしているので、プライベートとの区別があまりない」とか。

「『ありがたいなぁ』『わたしもうれしい』『なんでも勉強』『きっとなんでもうまくいく』」が口ぐせだとか。

「『世界は優しい』『人生はつながり』『幸せは一体感=自分のしていることが大きな文脈の中で誰かに貢献できていること』」が信念だとかとかとか……って情報多すぎ。そんなに込められてるの淡麗女子って言葉に。荷が重すぎやしませんか……。そしてすんません、言ってる意味が分からないところもチラホラと。目に見えない価値を広げるってどゆこと?大きな文脈ってなに?幸せは一体感ってわかるよなわからんよーなー……。

 それにしてもすごい量だな淡麗女子の条件。これだけの項目にチェックを入れて、再度絞り込み検索を入れたら、該当する「淡麗女子」は、おそらく世界に一人しかいない。そう、著者である芳中千裕だけが検索結果に引っかかるだろう。

 本人はいたって真面目に頑張ってきているのはわかる。その試行錯誤は本書を読めば伝わってくる。が、なーんか空回りしている感が否めないのは、詰め込みすぎているからだろうか。「私っていいでしょ」という自慢が透けて見えるからか。いや、どれも違うな。そもそも「淡麗女子」という言葉では、あなたが伝えたいことはきっと半分も伝わらない。「いいフレーズ見つけた!」となったのかもしれないけど、そこに客観性と、手放す勇気がないから、読んでいても今ひとつピンと来ないのかもしれない。実際に経験したこと、そこで学んだことはとても説得力があるのになんだかもったいない。アー日本語ムズカシネ!

(みらいパブリッシング 1400円+税)=アリーマントワネット

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