『占いで結婚しました!』柏木珠希(原作)、深森あき(まんが)著 自分だけのただひとつの幸せ

 なんだか実話であるらしい。金も若さも美貌も持ち合わせていない(と自称する)42歳の原作者が、6年つきあった恋人にフラレて、初めての「婚活」に挑んだ。その紆余曲折をコミカルにつづったコミックだ。

「オーバー40」が「結婚」を望む。そのことの困難なら私も知っている。例えば友人と話していて、「行き遅れている独身女」の自虐ネタでボケてみても、あまりウケなくなってきた。むしろ「しーちゃんは好きな仕事してるんだからいいじゃん!」って励まされてしまうようになってきた。若い頃から結婚願望が希薄だった私ですら、「自分は結婚しないのかもしれない」という事実に、背筋が寒くなるようになってきた。これは一人で過ごすことの孤独でもなく、孤独死への恐怖でもなく、ただ、この人生が、何の変化も発展もなく、このまま続いて終わっていくのではないかという茫漠とした不安である。

 本書の主人公である「カシワギ」はフリーライターで、あらゆる占い師に占ってもらい、その模様をレポートする連載コラムを持っていた。だから「婚活」を始めるにあたって彼女がしたことは、結婚相手の紹介サイトへの登録と、自分に似合う色や服をプロフェッショナルに選んでもらうこと、そして、前述の「あらゆる占い師」たちに、相性のいい男性のタイプや、自分に向いている結婚生活の重ね方などを占ってもらうことだった。

 彼女はトライアンドエラーをたくさん重ねる。へとへとになりながら、あれは違った、これも違った、と不必要なものをふるい落とす。手の中に残っていくのは「自分に合った幸せ像」だ。自分がどういう人間なのか。どういうことに幸せを感じやすいか。人にモテるために自分を矯正するのではなく、今ある自分そのままを受け入れてくれる出会いのために動くようになる。

 すると、突然出会いが舞い込む。彼女が幸せだと思うライフスタイルが、彼にとっても都合がいいという奇跡的な合致。でもここで伝わってくるのは「占いすげー!」というより、試行錯誤した彼女に対する「よかったねーー!」感である。ひとりの女性が、素顔のままで、共に生きていくパートナーを見つけた。

 幸せは「結婚」にあるのではない。「自分のまま」を受け入れあえる相手との出会いにこそ、ある。じゃあ、私はどうなったら幸せだろう。今ある幸せは何で、今ない幸せは何だろう。本を閉じて、そんなことに思いを馳せた。

(イースト・プレス 1100円+税)=小川志津子

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