「リレーコラム」ゼロからのスタートでJ1復帰 J2で波瀾万丈だった名古屋

2シーズンぶりのJ1復帰を決め、大喜びする名古屋イレブン=豊田

 目標だった「1年でJ1復帰」を名古屋が見事に成し遂げた。

 2017年12月3日、愛知県豊田市の豊田スタジアムで行われたプレーオフ決勝。J2で3位の名古屋が、4位福岡と0―0で引き分け、J1復帰を決めた。その瞬間、選手達は互いに抱き合い、うれし涙を流した。

 昨季はフロントの見込み違いや内部の混乱もあり年間16位でクラブ史上初のJ2に降格。20人近くの選手が入れ替わり、ゼロからのスタートだった今季、波瀾万丈のシーズンを乗り越え、歓喜の時を迎えた。

 チームの立て直しを担ったのは元日本代表MFで、J1川崎で指揮を務めた風間八宏監督だった。

 チーム復権を託され「楽しみの方が大きい。選手たちと一歩一歩つくっていきたい」と胸を躍らせたが、順風満帆とはいかなかった。

 2月に行われた沖縄キャンプ。練習試合は3試合を行い、1勝2敗で内容も悲惨だった。

 特に象徴的だったのがアジアの強豪、広州恒大(中国)戦での惨敗だった。連係がかみ合わずパスミスから、シュートまで運べない苦しい展開が続いた。

 ブラジル代表のパウリーニョを中心に個々の技術で圧倒され、1―6。監督が掲げる「つなぐサッカー」にはほど遠く、納得のいかない内容に多くの選手が天を仰いだ。

 それでも指揮官は「崩されたところはあまりなかった。まだこれから」と前向きで暗い表情は見せない。むしろ何か感触をつかんだようだった。

 そして迎えたJ2開幕戦。粗削りだが、沖縄キャンプでの課題を改善しての白星発進。その後も圧倒的な戦力で相手をねじ伏せ、一時は首位に立った。

 上昇気流に乗ったかと思われたが、主力の永井龍や玉田圭司らがけがで離脱。チームの歯車が狂い、一時プレーオフ圏外まで順位を下げた。

 連敗が続き、泥沼から抜けられない状況だったが、7月に救世主がやってきた。ブラジル人のガブリエルシャビエル(Gシャビエル)の加入で名古屋は息を吹き返したのだ。

 強豪クラブであるサンパウロの下部組織で育ったGシャビエルは、正確な左足のキックや縦横無尽に駆け抜けるドリブルでチームに貢献。すぐさま「風間サッカー」に適応した。

 さらに、序盤は出場機会が少なかった新鋭青木も持ち前のドリブルやGシャビエルとの連係で存在感を示し、J1昇格への原動力となった。

 風間監督は「まあ、もうちょっと待って」と口癖のように記者に話す。理想とするチームをつくり上げるには時間がかかるという意味だ。

 シーズン初めと比べ、驚くほどパスがつながるようになり、連係も深まり、J2最多の85得点をマークした。

 それでも課題は山積みだ。特に守備面ではディフェンス陣の不用意なパスミスや、カウンターからの失点が目立ち、今季J2で65失点と下から6番目だった。

 J2と比べ決定力の高いJ1で戦うには厳しい数字だ。チームはディフェンスラインから丁寧にボールをつなぐことを理想とするが、危険なエリアでの無理なパスは避けるシンプルさも必要だ。

 筆者はこの1年、急激なチームの成長を見てきた。シーズン終盤に監督が「まだまだ上がっていくと思う」と言ったように、伸びしろはまだまだある。

 J1では強敵との対戦から、さらなるレベルアップを期待したい。2014年のG大阪のように昇格即J1優勝を目指して。

神内 隆年(じんない・たかとし)プロフィル

1991年生まれ。京都市出身。2015年に入社。16年からは名古屋支社へ異動し名古屋グランパス、相撲などを担当。京都・山城高では陸上とサッカー、早大では競走部に所属した。

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