「DVD=3」 ボブ・ディラン『ボブ・ディラン・ドキュメンタリー・シリーズVOL.3 ボブ・ディラン/ボス・エンズ・オブ・ザ・レインボー〜1978-1989 信仰と混迷の時代〜』 証言と考察で振り返るボブ・ディランの80年代

ボブ・ディラン『ボブ・ディラン・ドキュメンタリー・シリーズVOL.3 ボブ・ディラン/ボス・エンズ・オブ・ザ・レインボー〜1978-1989 信仰と混迷の時代〜』

 こんなことがあったとは——。知らなかった事実に触れ、驚かされるばかりの132分だった。1978年の暮れ、「神の啓示」を経験したボブ・ディランの、ユダヤ教からキリスト教への改宗。反体制の旗印のような存在だった彼が宗教心を歌い始め、世間の物議を醸す。そんな、タイトルどおりの「信仰と混迷の時代」のなかのボブ・ディランの様子を追ったドキュメンタリーが本作だ。2008年の作だが、ノーベル文学賞受賞を記念してここに再リリースとなった。

 監督が音楽ドキュメンタリー界の巨匠、ロブ・ジョンストーンなだけあって、多くの関係者の証言を積み重ねて展開するその内容は初心者にもわかりやすく、引き込まれる。ロナルド・レーガンが第40代大統領に就任し、右傾化していく80年代のアメリカ。そんな時代の風も感じながら振り返る、一人の偉大なアーティストのライフヒストリーは、迷ったり、悩んだり、変化したりもする一人の人間としての姿も見せてくれた。

「すべては彼のなかにもともとあったものなんだ」。作品中のこの言葉が、妙に心に響いた。時折はさまれるディランの名曲たちとともに、深く心に残る作品だ。

(ポニーキャニオン・3800円+税)=玉木美企子

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