躍進賞?

 「追い越したいのは、昨日までの自分だ。」-ポニーテールをなびかせて走る女性。毎年恒例の郡市対抗県下一周駅伝大会、来年の大会の告知ポスターでこんな広告コピーを見つけた。シンプルな向上心の表明がいい。大会には前年との比較で最もタイムを縮めたチームをたたえる「躍進賞」という表彰もある▲本県の男子が躍進賞をもらったような気分-と言ったら的外れだろうか。と言っても、こちらは平均寿命のお話▲国勢調査結果などを基に厚生労働省が5年ごとにまとめる都道府県別生命表で、この5年間の平均寿命の延びが最も大きかったのが「長崎県の男性」。全国の延びが男1・18年、女0・66年だったのに対し、本県の男性の延びは1・50年▲平均寿命は80・38歳と大台に達し、全国での順位は過去最高の31位になった。自殺や肺炎による死亡数の減少が延びを支えたとされる。専門的な分析も待ちたい▲お年寄りの生活不安や介護問題の深刻化が指摘されて久しい。本県も例外ではあるまい。「長きをことほぐ」と書いて「長寿」-などと単純には言えない時代だ▲“躍進賞”を心から喜べる元気な長生きのため、それを見守り支えるため。老いも若きも、市民も企業も行政もそれぞれの立場で「昨日の自分を追い越す」工夫と努力を重ねたい。(智)

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